1Q84を読んでない感想

村上春樹の1Q84がでたとき、いろんな雑誌でところかまわず特集が組まれてたので、いちおう私もいくつか書評の依頼をいただいたんですよね。
ここぞとばかりに春樹バッシング総ざらいのような記事が横行していたので、私が何を書いても「AV女優にまで村上春樹は馬鹿にされてるぜ」というノリだったり「村上春樹を擁護する人なんてAV女優くらいしかいませんよー」的な雰囲気になってしまいそうで、普段はあんまり仕事の選り好みをしないのですけども、こればっかりは迷ったけどやっぱり断ってしまいました。

というかそもそも読んでないし。
ベタなエピソードかと思われますが、けっこう最近までIQ84(アイキュー84)だと思ってたから、きっとIQが84の足りない子といつもの「僕」がなんやかやする話なんだろうと思ってたし。
ほんとのとこのストーリーは今でも知らないし。

前に、女子がエロ本を買うときは、「エロ本読みますけど、何か?」というビッチか、「彼氏に買ってこいって言われたんです…」というパシリのどちらかを演出しなくてはいけないという話を書きましたけども、1Q84を買うときは「私、ハルキストなんです! ノルウェイの森とかノルウェイの森とか大好きなんです!」でいくにしろ、「あっ、これもう出てたんだ。ふーん、別に村上春樹(笑)とか興味ないけどいちおう話題作だし、いちおうチェックしてみようかしらね」でいくにしろ、どっちにしてもべらぼうにハードルが高いように思えてなりません。
もう少し落ち着いてから、文庫が出たあたりで、やはりエロ本のように他の関係ない本の間に挟んで何食わぬ顔でレジに持って行くのが、私の考える唯一の無難な方法です。
まわりではみんな当然のように発売日直後に買って読んでたけど、ほんとうに、どういう演出をして買ったんだろう?


もともと私は村上春樹の書いたものがどうとかよりも本人に恋していて、だから既刊を読み返してみたり、恥を忍んで新刊を買いに走る暇があればせっせと本人をオカズにしておりました。

村上春樹の書くペニス。
あの紙に印刷された明朝体の「ペニス」という単語だけで、他のもろもろのストーリーをすっとばしてもご飯が三杯食べられます。

村上春樹と私が同級生だったらという妄想は定番です。
村上さんはきっと、文化系男子のサブカルよりのグループに少し居心地悪そうに在籍していて、たまにオタクグループで居心地悪そうにしている純文学少年に話しかけたり、ひとりで居たり、クラス内の眼鏡で地味で、でもよく見ると顔立ちの整っている女の子と、高校生男子にしては不自然なくらい自然に話したりします。

私は中堅グループのなにもかも平均的な女子グループで、やはり居心地悪くもそれなりに擬態して過ごしているので、そんな村上君の行動を見てジェラジェラします。
机の上に座って、私にはよく分からん洋楽の話をする学ラン姿の村上君は恐れ多いくらいセクシーで、その学生服の下には果たして肉々しいペニスがあるのだろうか。信じられない。といった目で処女の私は見つめます。

高校では事務的な会話しかできなかったので、村上君と同じ大学に行くことにしました。
クラス内ヒエラルキーのしがらみから抜けた今、ややキャラ替えをして、さわやかに、なんでもないように話しかけることを決意します。
「ねえねえ、高校のときクラスいっしょだったよね、覚えてる?」
「ああ、峰さんね。同じ学部だったんだ」
会話は終了し、そのまま卒業し、まったく繋がりがなくなって月日がすぎて、私がどこぞの誰かの2人目の子を妊娠してるときに「風の歌を聴け」を読んで、やっぱり村上君は素敵な男の子だったんだなあ。高校生のときは、きっと村上君は童貞だったと思うんだけど、今はそりゃもう童貞じゃないんだろうなあ。昼休みに教室でぶらぶらさせていたはずの村上君のペニスは、今までに何回硬くなったんだろう。


原宿の奥地を散歩してるときとか、新宿駅のホームでぼさっとしてるときなんかに、村上さんもこの道を通って、この場所に立ったことがあるのだろうか、と考えます。そりゃああるでしょう。と思うとむらむら感動してしまうこともあります。
そこを、たまたま通りがかった村上さんが涙ぐむ私を見てつい声をかけます。
「どうしたんですか?」
私は言います。
「いま村上さんのことを考えてたんです。あの、いっしょに井戸に降りませんか?」
彼は言います。
「やれやれ。」
ペニス。


こういう気持ち悪い妄想を、私は夏目漱石に対してもしておりまして、村上春樹夏目漱石で二股かけるなんて罪深い女だわ! と葛藤してた時期もあったものの、1、2年前の夏目漱石展で漱石デスマスクを見てから、もう死んじゃった人なんだなーっていうことがやっと理解できて、少し恋心が冷めたのです。
そんな感じで、別に村上さんが死んだわけじゃないけど、でももうおじいちゃんの年代で、私と同級生でもないし、いっしょに井戸を降りたりなんてしてくれないことを昨晩ひょっと理解してびっくりしました。
もうオナネタにしません。
それから、ギャルソンを着るのはやめた方がいいと思います。


以上を、本当は手紙にしたためて村上春樹に送りつけようと思ってたけど、本人が読むかどうかも分からないから、どうせ読むか読まないかならブログにでも書こうと思ったので書きました。


追伸・コインを投げて表が出るか裏が出るか、その確立は1対1だということを習ったとき、そんな理不尽な話があるかと憤慨したことを覚えています。
コインのすり減り具合とか、投げる前のコインの向きとか、投げる人の癖とか、その日の風速とか、コインを投げた瞬間に鳥がくわえて持って行く可能性を無視するなんて、なんて理不尽! でも乱暴でシンプルで素敵! と、それは今でもそう思ってます。